アサヒビール木下朋和のwhisky!whiskey‼

Vol.3 テネシーウイスキーの親しみやすさ

 「とうもろこしを51%以上使用する」「アルコール度数80度以下になるよう蒸溜する」「内面を焦がしたオークの新樽に62・5度以下で貯蔵し2年以上熟成する」「添加物は水のみ」「40度以上で瓶詰する」。これらはすべて、アメリカの連邦アルコール法で規定されているバーボンウイスキーの条件です。

 バーボンという名称はフランスのブルボン朝が由来です。アメリカが独立する際、独立を後押ししたフランスに敬意を表して、ケンタッキー州の郡の一つにブルボン(bourbon)を英語で発音したバーボンと名付けました。そして、バーボン郡の端にある水路からウイスキーが出荷される際、バーボン郡のハンコが押されていたことから、周辺でつくられるウイスキーがバーボンウイスキーと呼ばれるようになったのです。

 ですが、規定には生産される地域の制約はありません。ですので、ケンタッキー州で造られようがテネシー州で造られようが、遠く離れた西海岸のカリフォルニア州で造られたとしても、規定を満たせばバーボンと名乗れるのです。

 前回ご紹介させていただいた「ジャックダニエル」は、先ほどのバーボンの規定を満たしているのですが、テネシーウイスキーを名乗っています。これは、バーボンの規定を満たしたうえで、「テネシー州で造られている」「チャコールメローイング製法で造られている」という、二つの条件も満たしているためです。

 チャコールメローイング製法とは、サトウカエデの木炭でろ過する製法のことを言います。サトウカエデとはメイプルの木、つまりメイプルシロップなどの原料となる樹液を採取する木です。その木炭を高さ約3メートルにもなる巨大なろ過器にぎっしりと詰め、蒸溜されたばかりの原酒を一滴一滴と垂らしろ過することで、雑味が取り除かれ、さらにメイプルの風味が付与されるのです。

 そしてジャックダニエルにはもう一つ大きな特徴があります。

 バーボンを造る際の原料の混合比率をマッシュビルというのですが、多くのバーボンがコーンの混合率を50%強に設定しているのに対して、「ジャックダニエル」はコーンが80%と非常に高いのです。原料の比率でいえば、味わいが濃厚で価格帯も高いコーンウイスキーに匹敵する比率です。

 とうもろこしの比率が高いと、時として荒々しい味わいに感じてしまうこともあるのですが、チャコールメローイング製法によってその荒々しさは取り除かれ、メイプルの風味も付与された、どこか親しみや懐かしさを感じる味わいに仕上がっているのです。

 前号でとうもろこしを主原料としたアメリカンウイスキーとして「ジャックダニエル」をお勧めすると申し上げたのは、とうもろこしの濃厚な甘みと親しみやすさが両立するこの個性ゆえです。ぜひお試しいただいて、アメリカンウイスキーを代表するブランド、「ジャックダニエル」の個性を体感していただければ幸いです。

ジャックダニエル(Old No.7)

容量700㎖/アルコール度数40%/オープン価格

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